著者の小川さんは文化人類学者であり、フィールドワークとしてタンザニアで長年露天商をしていたというユニークな人物。そんな小川さんが今度は香港を舞台に一攫千金をを夢見てやってくるタンザニア人たちの日常や仕事、その考え方などをまとめたのがこの本。タンザニア人、香港、チョンキンマンションと普段は聞き慣れないキーワードが満載だけど読んでみると自分の生活や仕事のヒントになりそうなことが散りばめられていた。また、国や人種は違えど他者と生きるという意味では本質的な部分はあまり変わらないのかも~という読後感だった。
章立て
- 信用について
- ある特定の場面(文脈)のみを信用する
- 誰しも置かれた状況により良い方向にも悪い方向にも進む可能性があるという前提がある
- 様々な事情を汲んだ上での無関心は配慮でもある
つまり「ペルソナ」とその裏側に「素顔」があって、「素顔」がわからないから信頼できないのではなく、責任を帰す一貫した不変のじこなどないと認識しているようにみえるのだ。
- 「ついで」が構築するセーフティネット
- 無理をしないことが基準
- 誰かがピンチのときにはみんなができる範囲で支援する
- 当事者の責任や原因は問わない
- 「いろいろな事情があるんだから、細かいことをいうのはやめようぜ」というスタンス
- フリーライドや支援額の傾斜についても細かく言わない
- 日常的な助け合いはなにかの「ついで」で回っている
- 例)タンザニアに一時帰国するからその「ついで」にものを運ぶ・何かを受け取ってる
- 仕事のスタンス
- 取引先にとって「扱いやすい人間」にならないようにする
- 対応だというスタンスを崩さない
- ユーモアを交える
- いい意味で適当
- 横のつながりをフル活用する
- シェアリング経済
- SNS投稿が信頼の一端を担っている
- 私生活や仕事風景をUPすることで関心を引く
- 遊びや楽しむという感覚で利用している。そのついでに信頼や仕事がついてくる
チョンキンマンションのボスは、不完全な人間とままならない他者や社会に自分勝手に意味を持たせることがどういうことかを知っている。自分に都合よく他者や社会を意義づけることにより、裏切られる事態をふくめた不確実性が存在することの重要性を知っている。彼らの仕組みは、洗礼しておらず、適当でいい加減だからこそ、格好いい。