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読書記録と日常のあれこれ。

論理トレーニング101題|読書メモ

東京大学教授 野矢茂樹氏の著書。タイトルどおり、「論理の力」を付けたい人向けの書籍で101の問題と解説を中心に構成されている。一見論理的に見える文章でもよく見ると支離滅裂になっていることがあり、その文章の書き手はもちろん、受け手も違和感無く読めてしまうことも問題だと序章で指摘され、その理由を日本語力の低さが要因だと説明されている。日本語は非論理的と言われがちだが、正しく理解し、使用すれば全くそんなことはなく、論理的な文章で説明することができる。101題全て解いてみたが半分位間違っていたので、内容をまとめつつ復習し、「論理の力」を身につけられるようにしたい。以下、備忘録として。

序章

  • 論理の力とは、思考を表現する力、あるいは表現された思考をきちんと読み解く力のことを言う
  • それは言葉を自在に扱う力であり、日本語力とも言い換えられる
  • 非論理的な文章は接続詞が使われていない又は正しく使われていないことが原因でそうなっていることが多い
  • 接続詞がないと、文と文の関係がうやむやになり、勢いで読ませる(読む)ことが可能になり、非論理的な文章でも一見それらしく見えてしまうのである
  • 言いたいことがあり、それを自分と意見が違うかもしれない他社へ伝えようとするときに論理が姿を現す。すなわち、自分と異なる意見と対話するときに要求される論理こそが重要かつ典型的な場面となる
  • 独善的な精神に論理はない。論理的な力とは、多様な意見への感受性と柔軟な応答力の内にある

 

1 議論を読む

第1章 接続表現に注意する
  • 自分の言葉に敏感になること、それが「論理的」になる道である
  • 文と文の関係、パラグラフ(論点のひとまとまり)の関係、そこに論理展開が現れ、整合性を問われる。言葉と言葉のつながりを明示する言葉が接続現である。それゆえ、論理は接続表現に示される
  • 接続表現とは、対話における「合いの手」でもある
  • 何かを相手に説明すると「それで?」や「どういうこと?」といった反応が返ってくる
  • そしてそれに答えるべく、次の主張が展開され、それに応じて適切な接続表現が選ばれる
  • 「どういうこと?」と問われて「つまり」と応じ、具体的に説明しようとすると「たとえば」と応じる。「それから?」⇒「そして」、「どうして?」⇒「なぜなら」と続ける
  • あるいは、相手が思っているもとは違う方向に話を転換させようと思ったならば、「しかし」と切り出す
  • 議論を読み解くとは、こうした問いと応答の流れを読むこと、その対話の構造をつかむことである
  • そのリズムが送り手を受け手で共有されたとき、分かりやすい文章が生まれる
  • そのため、自分で論理的な文章を書こうとする場合、まずは自覚的に接続表現を用いるようにすることが重要となる
  • そしてまた、論理的な文章を読み解くときにも、そこで用いられている接続表現に注意して読む
  • 「論理的になるためにはどうすればよいか」⇒「接続表現に自覚的になるのが一番」、これが答えである
  • 主な接続用語は7つ
    • 付加
    • 理由
    • 例示
    • 転換
    • 解説
    • 帰結
    • 補足
  • 接続関係を読み解く際の基本的なポイント2点
    • 1.主張の方向を見定める
    • 2.主張の軽重を見積もる
  • 論理トレーニングのチャンスは読書にあり
    • ふだんの読書において、ちょっと変な接続表現の使用に敏感になること。そして、そんな表現が見つかったら、。どうしてこの人はこの言葉を使ったのだろうと考えてみる。あっさり読んでいるときには見えなかったものが見えてくる可能性がある
第2章 議論の骨格をつかまえる
  • 議論は骨格を持っているため、その骨格をつかまえなければならない。それはときに、かなり複雑な構造をもつこともある。それをキチンと把握するためには議論を整理して捉えていかねばならない
  • 第1章で出た7つの接続関係を4つのカテゴリーにまとめる
    • 解説 A=B
    • 根拠 A→B(AだからB)
    • 付加 A+B
    • 転換 A〆→B(AしかしB)
  • 議論を読む時、もっとも重要なことは議論を構成する幹の部分と枝葉の部分がきちんと識別できることである
  • 入り組んだ議論も、枝葉を落としてみると、しばしば意外とすっきりした姿を見せてくる
  • 議論の骨格を捉える作業は基本的に2つのステップからなる
    • 1.解説と根拠をまとめて主張提示文をマークする
      • 主張提示文には2つのタイプがある
        • AとBが解説の関係にあるときそれは内容的にひとまとまりとなる。そこで、AかBのいずれか、より内容をコンパクトかつ的確に表現している方を主張提示文とする
        • AがBの理由を与えている時、基本的に言いたいことはBであり、Aはその正当化のために使われている。そこで、主張低自分としてBを取り出す
    • 2.主張提示文を付加ないし転換の関係で接続する
  • 「読む」とは手仕事である。ただ書かれた文字の順に従って一読するだけではだめで、印を付けたり、カッコに入れたりといった作業をしながら、行きつ戻りつして読む
  • このことは「書く」ことにも通じる。「主張提示」「解説」「根拠」という議論の主と従うの関係を明確にする。そしてまた主張の方向を転換し、議論の流れを揺さぶりながらも本線の方向を間違いなく示す。コレが文章を論理的に有機化するということである
  • 上記を意識することで、何がポイントなのか、何が言いたいのかがよくわからない散漫であったり、支離滅裂な文章になることを回避できる

2論証する

第3章
  • 論証とは、ある前提からなんなのかの結論を導くこと(前提Aだから結論B)
  • 前提から結論へのジャンプ幅が小さいとその論証は生産力を失う。しかし、幅があまりにこ大きいと説得力を失う。そのため、幅のバランスを取りながら小さなジャンプを積み重ねて大きな距離をかせがなくてはならない。それが、論証である
  • 根拠と導出
    • 一般的に論証の構造は、①根拠②導出③結論、となる
    • 当たり前だが、その全てに正しさ(確からしさ)が求めらる
  • 結合論証
    • 複数の主張がそれぞれ単独では根拠としての力をもたず、組み合わされて初めてひとつの根拠たりうる場合
  • 合流論証
    • 複数の主張が単独でも根拠として働き、それゆえ複数の根拠がひとつの結論を支えている場合
  • 論証の構造をつかまえるにはまず結論を押さえ、その結論の直接を探すとよい
  • おして、その根拠と成る主張に対しても何らかの根拠提示されているかどうかをチェックし、あればその根拠をとらえる(この手順のい繰り返し)
  • こうして結論から根拠をさかのぼっていく
  • 演繹と推測
    • 演繹:根拠とされる主張を認めたならば結論も必ず認めねばならないような決定的な力をきたいされている導出(根拠から結論まで一本道)
    • 推測:ある事実をもとに、それを説明するような仮説を提案するタイプの導出(必ずしも一本道ではない)
第4章 演繹の正しさ・推測の適切さ
演繹に関して大事なこと
  • 逆は必ずしも真ならず
    • 逆:B→A(毒キノコはテングダケだ)
    • 裏:Aでない→Bでない(テングダケではないならば、毒キノコではない)
    • 対偶:Bでない→Aでない(毒キノコでないならば、テングダケではない)
  • 隠れた前提を探せ
    • 隠れた前提を探り出すという作業が演繹的な論証を評価するさいにはきわめて重要なこととなる
推測の適切さに関して大事なこと
  • 代替仮説の可能性
    • 提案された下越による証拠の説明がうまく成功していたとしても、もし他に有力な代替仮説がありうるならば、その分だけその推測は説明力の弱いものとなる
  • 推測の適切さ、説得力は次の2点から評価される
    • 1)仮説は証拠と成ることがらを適切に説明しているか
    • 2)他に有力な代替仮説は考えられないか
  • 因果関係を探る
    • 2つのたタイプの現象AとBが伴って生じているとき、そこには少なくとも次の4つのパターンが考えらる
      • 1)たんなる偶然
      • 2)AがBの原因
      • 3)BがAの原因
      • 4)AとBの共通原因Cが存在する
第5章 論証を批判的に捉える
  • 批判とは必ずしも反対する、ということではない
  • 理解するため、あるいは受け入れるために為さられるのも批判である
  • 結論には共感しつつも、なおその結論に対して「これはおかしい」と声が上がるケースがそれ
  • 批判と反対の意味を取り違えないように注意したい
  • そうしないと対立するか、馴れ合うかのどちらかしか選べなくなる
  • 自分を批判する相手をただ敵対者としてしか捉えられなくなり、その結果、自分自身に対する批判的なまなざしも失われる
  • あえて波風を立てること、第三者的視点から下記を行うこと
    • 議論に不整合はないか。説明不足な点はないか。導出に飛躍はないか。根拠は確からしいか。全体の説得力はどのくらいか
  • 質問のトレーニン
    • 健全な批判を行うことになれていない場合、質問から入るとよい
    • いきなり批判するよりも質問のほうが心理的に楽なため
    • 質問は批判のための武器でもあるため、批判上級者であっても手放せない技術であり、奥深かさもある
    • 質問は恥という考えも捨てる
    • 相手の説明不足、議論の弱さを的確につかんが質問、そのような質問を適切に発し、それによってより深い理解や批判へ進むことができれば、質問が恥ずかしいという考えもなくなる
  • 立論・異論・批判
    • 立論:あることを主張し、それに対して論証をあたえること
    • 異論:相手の主張と対立するような主張を立証すること
    • 批判:相手の立証の論証部分にたいして反論すること。対立する主張まではだしていない