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読書記録と日常のあれこれ。

THE RHETORIC 人生の武器としての伝える技術|読書メモ

人に何かを伝えるのは難しい。また”伝え終わり”ではなく、行動を起こしてもらうのはもっと難しい。伝える人数が増えるとよりハードルが高くなる。
そんな風に思っている人は多いのではないだろうか。自分も常日頃から難しいと感じていて、少しでも参考になればと思いこの本を読んでみた。

本書では、人生をより楽しくするための”伝える技術”が詰まっている。500ページ超えでボリュームはあるが、比較的わかりやすく詳細に書かれており、巻末にはまとめページもあるため、手元に置いておくと辞書的に使えると思う。
※以前読んだアリストテレス 弁論術 (岩波文庫)影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか人を動かす 文庫版等の書籍とも通じる部分があり、もしかすると参考にしているのかもしれない。(弁論術は古典なので全てのベースとして活用されていそう)

まだ理解不足ではあるけど実践しながらより理解度を上げ、使えるようにしていきたい。
以下、振り返り用メモ。

章立て

Part1 「攻め」の伝える技術 相手の心をつかむ

1章 伝える義受注の達人になるために
2章 「議論」の目的を決める
3章 時制をコントロールする
4章 聞き手の心をほぐす
5章 聞き手に好感をもたせる
6章 聞き手に耳を傾けさせる
7章 聞き手の信頼を得る
8章 聞き手への思いやりを示す
9章 聞き手の感情を変える
10章 聞き手の怒りを和らげる
11章 有利な立場を築く
12章 論点をうまく定義する
13章 議論をコントロールする

Patr2「守り」の伝える技術 相手の議論から身を守る

14章 論理の誤りを見抜く
15章 議論を台無しにする反則を見極める
16章 相手を信用できるかを見極める
17章 相手の能力を見極める
18章 いじめに対処する

Part3 「攻め」の伝える技術 応用編 相手を自然に動かす

19章 気の利いた受け答えをする
20章 現実を違った角度から見せる
21章 キーワードを使って集団をひとつにする
22章 あなたが選んだものに共感させる
23章 失敗をうまく挽回する
24章 好機を見逃せない
25章 適切な手段で伝える

Part4 大勢の人の心をつかむ技術

26章 説得力のある話をする
27章 聴衆の心をつかむ
28章 説得力のある文章を書く
29章 目的に合った技法を使う
30章 価値観で分断されている世界を生きるために

 

読書メモ

効果的に相手を説得するには、聞き手が何を信じ、何を期待し、何に重きを起き、どんな感情を抱いているかを読み取る力が必要だ。
”伝える技術”を学ぶことで、どんなときにも冷静に、それを読み取れるようになる。

レトリックという伝える技術は何よりも人を癒やす力をもっている。

  • 説得とは、単に相手の合意を得ることではなく、聞き手をこちらの思いどおりに動かすことである
  • レトリックはリーダーシップに欠かせないスキルの一つ
  • 論理だけでは人間を行動へと駆り立てることはできない。相手に行動したいと「望ませる」ことが必要
  • 口論は争いを助長し、議論は聞き手を説得し味方に付けることができる
  • 自分の立場が危うくならないていどに相手の論点を認める=譲歩、ことで、膠着した議論をよい方向に進めることができる
  • 語り手の個人的な目的を設定する
  • 人を説得する3つの目的
    • ①聞き手の感情を刺激する
    • ②聞き手の考えを変える
    • ③聞き手を行動へのと駆り立てる
  • 議論の論点は3つに集約される
    • ①非難(過去形)
      • 例)法廷は懲罰を扱う
    • ②価値(現在形)
      • 例)演示は人と人を結びつけたり、区別したりする
    • ③選択(未来形)
      • 例)審議は利益を約束する
  • 話しを上手く運ぶためには事実に固執してはいけない
  • 聴衆の反論を見越して自分からのその話をすると説得できる可能性が高まる
  • 議論できないものについては、議論しない

「目的に合った時制を使う」というのは、非常に大切だ。聴衆に何かを選択させたいなら、未来に焦点をあてなければならない。

  • 3つの説得術
    • 語り手の人柄による説得(エートス
      • 語り手の人柄(人格、評判、信頼)を使った技法
      • 徳(大義)、実践的知恵(技能)、公平無私(思いやり)
    • 話の論理による説得(ロゴス)
      • 論理の力を使い、聞き手が考えていることを利用する一連の技法
    • 聞き手の感情による説得(パトス)
      • 感情に訴える技法
  • 譲歩は歩み寄りの精神。最も大切なのは「相手に共感する」ということ。共感の第一歩は相手に関心を示すこと
  • 人が変わると同じ技法でもうまくいくとは限らない。自分とはかけ離れた人柄を装うことはできない。つまり、自分らしく話すのが一番いい
  • 外見を聴衆のイメージや説得相手によって変えることで説得力が増す(印象マネジメント)
  • その場にふさわしい(適切な)振る舞い、言葉使いにする
    • 適切さ=ディーコラム
  • 相手の価値観を知り、その価値観を共有しているように見せる
  • 自分で自分の功績を話すよりも、他人の口から語られる方が効果的
  • 徳があるように見せる方法
    • 自分の功績を語る
    • 他の人に自分の功績を話してもらう
    • 欠点をあえて見せる
    • 周りの動向によって意見を変える
  • 実践的知恵(技能)
    • 自分の経験をアピールする
    • 必要に応じてルールを曲げる
    • 中庸であるように見せる
  • 話下手やそう見せることは、状況によっては武器になる
  • 感情は予測と経験から生まれる。そのため、実際に経験したときの感覚をよりイキイキとかtがれば、より強い感情を聴衆に起こさせることができる
    • 過去に起こった、あるいはこれから起こるであろうと聴衆が信じていること
  • 気分を変えるのに最も効果があるのはストーリーを細部まで詳しく話すこと
  • 感情に訴える議論はシンプルに話す。言葉が少ない方が、より感情を揺さぶる
    • ロゴス、エートスを使って話したあとパトスを使うとよい
  • ユーモアは相手の警戒心を緩ませる
  • 怒りは相手を行動に駆り立てる
  • 未来の話をするときは集団への忠誠心を利用する
  • 欲望は相手の行動を促す
  • 説得へのギャップを見つけ、それを欲望で埋める
  • 相手の怒りを和らげる方法
    • 受動態
    • 快適さ
    • ユーモア
    • 感情で返さない
    • オーバーリアクション
  • 聴衆を納得をさせる方法
    • 聴衆にとっての利益を知る
    • 共通認識の活用
  • レッテル貼りのテクニック
    • 言葉を換える
    • 定義し直す
    • 柔術
    • 相手と対象的な言葉を使う
  • 枠組み作りのテクニック
    • ①有利になるような共通認識のある言葉を使う
    • ②幅広い状況に当てはまるような論点を定義する
    • ③具体的な問題を扱う。未来形を使って話す
  • スタンスを取る際の順序
    • ①事実
    • ②定義
    • ③質
    • ④妥当性
  • 論理(ロゴス)の基礎
  • 論理の誤りを見抜く際の視点
    • ①証明が成り立つか
    • ②選択肢がいくつか示されているか(考えつくされていそうか)
    • ③証明は結論を導くものになっているか
  • 論理上の罪
    • 間違った証明
    • 間違った帰結
    • 証明と結論の分断
  • 論理は感情の上に成り立つものであり、論理が上手く働くかどうかは、人が事実をどのように解釈するかによる
  • 相手の信頼性を見抜くポイント
    • 語り手のニーズを考えてみる(私利私欲がないか)。説得者のニーズと自分のニーズが合致しているかを確認する
    • 提示された選択肢が中庸かどうかを考える。極端すぎる場合は注意が必要
  • いじめる人(攻撃的な人) に対する対処法
    • ①ターゲットにする聴衆を絞る(聴衆を味方につける)
    • ②皮肉な愛情
    • ③徳があるように見せる
    • ④積極的関心
  • 集団を一つにするテクニック
    • 符号を使った毛づくろい
      • 集団特有の言葉を使う。スラングや訛りなど
    • 論理を排除して価値観を主張する
      • 過度な論理はマイナス。それよりも集団が大事にする価値観に重きを置く
    • 反対の言葉
      • 論敵が使った言葉と反対の言葉を使う
  • 失敗したときの対処法
    • 目的を決める
    • 最初に察知できるようにしておく
    • 未来の話をする
    • 相手を見下さない
    • 安易な謝罪に頼らない
      • 謝罪ではなく基準にそわないことをしてしまった気持ちを表す
  • どの感覚に訴えるかで使う手段は変わる
    • 聴覚(論理)、嗅覚(感情)、視覚(感情と人格)、触覚(感情)、味覚(感情 )
  • メールは論理を伝えるには適しているが感情表現は難しい
    • メッセージとして発信した瞬間に自分の手を離れ管理できなくなるため
    • 文字には人柄が現れる
  • TEDでは、”スピーチを何かを見つける旅に見立てる”というテクニックを使っている話者が多い

誰かと意見が合わないことがあったら、相手の信念や期待や望んでいることを利用してみてください。あなたの選択肢に同意させるための”てこ”として使うのです。そして、あなた自身に問いかけてみてください。こうやって人を「操る」ことで世界は悪くなるのか?よくなるのか?

  • 説得力の話をする際のポイント
  • 発想
    • スピーチに使える材料を掘り起こす
  • 配置
    • 陳述、提議、立証、反論、結論
  • 修辞(文体)
    • 適切な言葉、明瞭さ、鮮烈さ、ディーコラム、装飾
  • 記憶
    • よどみなく話すために、原稿をどう覚えるか
  • 発表
    • どう伝えるか
  • TED式
    • 結論の前に証明を持ってくる
  • よい文章を書くポイント
    • 自分の欠点を利用する
    • テーマにひねりを加える
    • 読み手に気付きを与える
    • ストーリーの要素を加える
  • 2つの側面から考える
    • 美味しい・まずい、良い・悪いなど
  • 訓練方法
    • 枠組みの再構築
    • 比喩を使う
    • 相手に歩み寄る
    • ドキュメンタリー番組を見る
    • 広告を分析する
    • 場面に応じた技法を考える
    • 聴衆の価値を考える
    • 短い文を重ねてスピーチする
  • 会議や議論の目的と時制を決める
  • 強調したいのは人柄・論理・感情のどれなのかを考える
  • 説得に適したタイミングと手段を考える