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読書記録と日常のあれこれ。

ネット・プロモーター経営|読書メモ

ファンマーケティングの成果を上げることや成果を可視化するための手段として親和性が高いなというのがまず感じたこと。NPSの仕組みと考え方はシンプルだけど、実務に落とし込み、実践し続けるのは相当難しい。理由は社内関係者のリテラシーレベルや掛けた工数(コスト)に対してどの位のリターンがあるのかがパッと出しにくさにある。ただ、他社事例や自社に落とし込んだ場合のロジック組むことでクリアすることができるので、このあたりは本書や他の事例などを読み込み、使える状態にしておきたいところ。
コンテンツマーケティングも成果の可視化や価値証明が難しい部分があり、理由も財務諸表で目に見えるような有形資産になりにくいという点なのでこのあたりはNPSも共通しているのだなと納得。
自社プロダクトの改善や顧客提案にも応用できる部分はあると感じたため、復習がてらにメモしつつ、最新状況もキャッチアップして理解を深めておきたい。

書籍情報

  • 著者 フレッド・ライクヘッド、ロブ・マーキー
  • 発行 2013年1月29日

章立て

  • 序章 スコアからシステムへ
  • 第1章 悪しき利益と良き利益、そして究極の質問
  • 第2章 成果を測定する基準
  • 第3章 NPSが利益ある成長をもたらすメカニズム
  • 第4章 エンタープライズの物語
  • 第5章 NPSを測定するには
  • 第6章 NPSで成果を出すということ
  • 第7章 経済性と動機づけ:二つの欠かせない柱
  • 第8章 顧客との「クローズド・ループ」を回す
  • 第9章 長期的な変革にソナエル
  • 第10章 ネット・プロモーターの最前線

NPSとは

  • NPS(推奨者の正味比率)は企業がいかに自社の顧客を大切にしているか。その結果、顧客ロイヤリティを生み出せているかを測定するうための手法

NPSの必要性

  • 企業にはよい利益と悪い利益がある
  • いずれも財務諸表上は同じ利益
  • ただ、実情は全く別でよい利益は長期的な成長を促し、悪い利益は一時的な成長と中長期的な衰退を招く
  • よい利益はロイヤリティの高い顧客が生み出すもので、悪い利益は合意な手法で獲得した顧客が生み出している(例外もある)
  • 企業としてはよい利益を生み続けなければならないが、利益の良し悪しは財務諸表には反映されず、他の方法でも可視化されにくい
  • そこでNPSを導入することで良し悪しと状態を可視化し、経営への示唆を得ることができる
  • これがNPSが生まれ、必要とされている理由
    • 今だとソーシャルリスニングなどもあるのでNPSだけに頼る必要がないかもだが、企業の業種や目的によっては有効だと思うし、あくまでの手段ということを認識した上で導入すれば有益だと考える

顧客ロイヤリティのジレンマ

  • 顧客ロイヤリティを上げることで企業の成長につながる
  • であれば、顧客ロイヤリティを上げるためにリレーションシップを強化すべきである
  • これについては批判はあれど真正面から反対されることはほぼない
  • ただ、実態はちょっと違っていて顧客ロイヤリティとはかけ離れたコミュニケーションが行われていることがある
  • 例えば、デメリットをあえて言わずに無理やり売り込む営業マンなど
  • その理由は従業員が負う責任や評価基準に関連している。単純に言うと売上などのわかりやすい成果に責任を負っており、達成しないと待遇が上がらないことが原因になっている
  • 企業が測定し評価するのは財務的成果がメインで人事評価もそれらに関連した指標で決まる。問題は、良き利益と悪しき利益を会計上は全く識別できないことにある(利益1億円という事実と価値は顧客の良し悪しに影響されない)

NPSの評価と企業の成長

  • 高いロイヤリティを誇る企業は、競合他社に比べてマーケティング費や新規顧客獲得コストを大幅に抑制できる場合が多い
  • NPSスコアが高い企業は競合企業と比較し二倍以上のスピードで成長している
    • 時代背景やNPS以外の要素もあるのでそれらを考慮して加味する必要はある
平均的企業では三分の二を超える顧客が、飽き飽きしている中立者か、怒っている批判者のいずれかであった。この嘆かわしい現実を見る限り、成長を金であがなう試みのほとんどは、株主資本を食いつぶすものでしかない。そうした試みは、宣伝や特売に金をつぎ込みながら、結局、不満客とい有毒ガスをばらまいているも同然なのである。

耳が痛い話し。短期視点で獲得した顧客はデメリットのほうが大きい。それを分かっていても成果と評価のためにわかりやすい手段に走ってしまう。広告やキャンペーンが全てそうというわけではないが、こういった副作用が発生しうるということを鑑みた上で、マーケティング戦略を練り、実践していく必要があることを再認識した。

成果を測定する基準

  • 欠かせない指標は顧客の利益と顧客の幸福
  • 上記2つをみたせているかを測る手段として、NPSでは「A社を友人や同僚に進める可能性は、どのくらいありますか」という質問がある
  • これは統計的に継続購入や推奨と最も相関が高い質問で、元P&Gのスコット・クック氏が試行錯誤の上あみだしたものらしい
    • もちろん、この質問も万能ではないので企業の業種業態、目的によりチューンニングは必要

回答(NPS)の採点方法

  • 推奨者の割合(%)から批評者の割合(%)を差し引いた数字を見る
  • セグメントは下記3つ
    • ①第一セグメント(推奨者):9点、10点をつけた人。リピートや紹介率が高い
    • ②第二セグメント(中立者):7点、8点をつけた人。推奨者と比較するとロイヤルティが低い。惰性やリテラシーの関係でやむなく購買している可能性もある
    • ③第三セグメント(批判者):6点以下をつけた人。批判的な口コミの80%以上を占める。売上的に寄与しているように見えるかもしれないが、離反リスクが高いのと、批判的な口コミなどで大きな損害をもたらす可能性を秘めており、新規顧客の購買意欲にも影響を与えている。

効果の可視化

  • 下記指標を推奨者、中立者、批判者毎に可視化することでNPSを上げることがどれだけ事業に貢献しているかを証明することができる
    • 顧客維持率
    • 購買単価
    • 年間購入額
    • 費用対効果
    • 口コミ

測定

  • 詳細は書籍記載の通りだが、抑えておきたい原則は以下8点
  • 原則一 究極の質問を尋ね、それ以外の質問は極力減らす
  • 原則二 有効な評価尺度を選び、それを使い続ける
  • 原則三 自社顧客調査(ボトムアップ)のスコアと外部調査(トップダウンベンチマーク)のスコアを混同しない
  • 原則四 適切な顧客からの回答率を高めることを目指す
  • 原則五 財務データと同じ頻度で、NPS報告や議論を行う
  • 原則六 調査単位を細かくして、より速く学習し、責任を持たせる
  • 原則七 正確さを担保し、バイアスを取り除く
  • 原則八 顧客のスコアと行動との相関を実証する