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読書記録と日常のあれこれ。

宮大工棟梁・西岡常一 「口伝」の重み|読書メモ

目についておもしろそうと思い読んでみた。結果、めちゃくちゃよかった。ジャンル的にはビジネス書ではないけど仕事をする上で大切かつ本質的ななことがたくさん書かれていた。一見非効率に思える考えや行動も長い目で見るとプラスに働くということが理解できたので自分の仕事やプライベートに置き換えて、色々試してみたいと思う。
印象に残った箇所は備忘録として以下にメモっておく。

書籍情報

宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み (日経ビジネス人文庫 オレンジ に 2-1)

章立て

第一部 西岡常一の履歴書

  • 第一章 千年先見通す「口伝」の重み
  • 第二章 法隆寺を守る”棟梁三代の心” 
  • 第三章 一ノミといえども、疎かにせず

第二部 宮大工棟梁の肖像

  • 第四章 受け継がれる「口伝」 
  • 第五章 受け継がれる「こころ」
  • 第六章 「木と話す」文化
  • 第七章 父親として

*

「人間の木も草も、みんな土から育つんや。宮大工はまず土のことを学んで、土をよく知らんといかん。土を知ってはじめて、そこから育った木のことがわかるのや。」

小学校卒業後の進路検討の際に祖父から言われた言葉。
宮大工として一人前になるため、設計なども学べるよう工業高校を父から勧められるも祖父は断固反対し、農業を学ぶよう強く進め、結果言われたとおりの道を歩むことに。
宮大工という仕事の本質を身につけるためには木を育てる土を理解しないといけない、という意味でこれはどんな仕事にも通ずる考え方。

頼まれたら、損得かまわず

単なるお人好しではなく頼られる人間であるという前提と困っている人を助けたいという両方の意味がありそう。打算で動く人も多い世の中なのでそうならないようにしたい。

このころ、軍医さんの真似をしてヒゲをはやした。隊には大男が多く、バカにされないようにと考えてのことだった。

印象マネジメント大事

「木は生育の方位のままに使え」

まさに適材適所で、木には陽おもてと陽うらがあり、それぞれで節や木目のあらさが違い、木材として切ったあともその性質が残る。そのため、木の生えていた土地、性質を見極めて適材適所で使わないと木本来のパワーを発揮できないということらしい。
これは組織の人員配置にも言えることで、その人のスキルやマインドに合った環境でパフォーマンスが発揮できる状態にしないと宝の持ち腐れになってしまったり、さいあく仕事ができないというレッテルを貼られてしまう可能性がある。リーダーやマネージャーはこの点を留意しておかないと成果が出ないメンバーに対して他責思考になってしまう。また成果を出せるメンバーに対しては自身の育成やメンタリングのおかげだと勘違いしてしまうこともある。
西岡さんの場合は宮大工をするうえで建築の仕上がりを最高にし、その状態を長続きさせるためにも適材適所に相当気を配っていたのだと思う。

とくにかく、外から教わっても鵜呑みにせず、すべての日本の風土に合わせて工夫したのを、解体してつぶさに知ることができた。

建築技術を取り入れる際の心構えの話。
自身の仕事でも同様にアドバイスや知見は吸収しつつ、それをそのまま鵜呑みにせず、あるときは疑い、あるときはチューニングして、使えるような状態に仕立てる必要があると感じた。

扱い方は絵巻物が教えてくれた

古代に伝わる大工用工具の話。
実際の使い方がわからず、教えてくれる人がいなくても、何らかの手がかりがあれば習得は不可能ではない。仮説、検証、改善を根気よく繰り返すのみ。

在来工法見直しが盛んなようだが、木だ木だと急に騒いで、外国の木の資源までつぶしてしまうようでは本末転倒、木造、木の文化を語るなら、まず山を緑にしてからである。それも早く太くの造林ではなく、山全体に自然のまま強い気を育ててほしい。

本質。
何十年も前から木を育てることの大切さが説かれていたにも関わらず、おそらく効率化や生産性に目が行き過ぎてしまい、一見非効率な生産方法は受け入れられなかったのかなと推察。結果、輸入建材の価格高騰と国産材の不足と高価格化により苦しんでいるのを見るとなんだかなぁ、という気持ち。

「一生懸命やっていれば、どこを見られても恥ずかしくない」

自戒。そうならないとな。

「自分で考えろ」

職人気質だからとかそういうことではなく、自分の頭で考えて行動して失敗・成功を経験しないと成長できないということ。納得しかない

心があってこそ人間関係がうまくいきます。

西岡さんを知る人が、西岡さんのすごさを説明したシーンでの言葉。
いくら技術があってもそれだけでは人は付いてこないし、育てられない。
大工という仕事を通して人間成長も与えられるよう弟子に接していた西岡さんはすごい。口ではいくらでもいえるが本当の意味でメンバーをマネジメントするのは相当な覚悟と燃料がいるはず。

知識はもっとかなあかん。だけど知識人にはなるな

知識を付けのは大事だがそれに固執しすぎるのはダメ、という考え方。ソクラテスも自分は何も知らないということをキモに命じていたらしいので意味合いは近い。
知識がついてくるとそれらが絶対的に正しいと思ってしまうことはあると思うので、そうならないように気をつけたい。

事に使えて意気感ず

労働は端的に言うと労力の切り売り。仕事は銭金でははかれない価値を全生命を掛けるもの。かなり重い言葉だし精神論的な感じなので賛否ありそうだけど、本当の仕事ってそういうものなんだと思う。

知識として持ってても知恵として活かせないような知識はあってもしかたない

考える人になるな、動く考える人になれということ。