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読書記録と日常のあれこれ。

ゆっくり、いそげ カフェからはじめる人を手段化しない経済|読書メモ

タイトルに惹かれて読んでみたら、想像以上に面白くてタメになった書籍。マッキンゼーからVCに転身したのち、クルミドコーヒーを創業。コーヒーの素人で「カフェなんてやりたくなかった」と語っていた著者がなぜ、カフェのオーナーをやっているのか?
書籍内では著者の想いとともに語られていて、コロナが常態化し、人と人の繋がりが希薄化しやすい今だからこそ、読んで良かったと思える内容だった。
今後の仕事や人生との向き合い方にも良い影響を与えてくれた本書に感謝。
以下に気付きをメモしておく。

書籍情報

ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~
著者 影山知明
発行 2015年3月30日
ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~

各章の気付きメモ

  • 第1章 一キロ三〇〇〇円のクルミの向こうにある暮らしを守る方法
    • 機能的価値だけでなく、情緒的価値を感じてもらう仕組みを作る、工夫をする
    • 生産者・顧客・自社など、関係者全体で価値のキャッチボールをする
  • 第2章 テイクから入るか、ギブから入るか。それが問題だ
    • 「消費者的な人格」を刺激してしすぎてしまうと価格のみで価値を判断されてしまう恐れがある
    • 心地よい返報性の法則を使う
    • 関係性を維持するために等価交換ではなくあえて”不等価”にする
  • 第3章 お金だけでない大事なものを大事にする仕組み
    • リアルのコミュニケーションを通して信頼関係を築き、他人事から自分事になってもらう
    • 結果、応援者(ファン)が増える
  • 第4章 「交換の原則」を変える
    • 利用し合う(利己)のではなく、支援し合う(利他)
    • ”利用”の関係は損得勘定や利害関係に紐づくメリット・デメリットに基づく欲張りな感情から生まれる
    • 社会の自動販売機化=商品・サービスの向こう側にいるはずの人の存在が想像できない状態。こうなると”感謝”の気持ちも薄れ、社会から温度が失われてしまう
    • 経済とは、仕事や価値の交換の連なり/循環と定義することができる
  • 第5章 人を「支援」する組織づくり
    • 仲間(従業員)を幸せにできなえれば、お客様も幸せにできない。できたとしても長続きしない

”管理は自己中心の行動様式であり、支援は相手中心の行動様式である。(中略)管理関係は「させる/させられる」を交換しあっているのであり、支援関係は「してもらう/しててあげる」を交換している。”

  • 第6章 「私」が「私たち」になる
    • 対話とは、話すより聞く・違いを楽しむこと
    • 共有地から対話が生まれ文化になる

自分の「利用価値」や「機能性」でなく、「存在そのもの」を受け止めてくれる他者がいることで、素の自分に戻れる場所があるーこうしたことはいずれも、一人である限りは得られない種類の「可能性」だ。

  • 第7章 「時間」は敵か、それとも味方か
    • ビジネス的な生産性から見ると時間はコスト。短い時間で最大の成果を出すのが正解
    • ただ、本当に”それだけ”でいいのか?という話もある
    • また、時間との戦いは消耗戦になりがちのため別の視点で見直す必要がある
    • 時間と戦わずに時間を味方にする

お金のために働くこと、お金のための経済をやめる。お金以外の価値の大事さを見直す。一つ一つに仕事に、時間と手間をちゃんとかける。自分の目的のために目の前の人を利用するのではなく、支援するために力を尽くす。こうした経済のありようは、お金以外の価値を含めた世の「価値の総和」を大きくする方向に寄与するのみならず、実は人の可能性を引き出し、仕事の内実を高め、結果として長い目で見たときに、世の金銭的価値そのものをおおきくする方向にも働くのではないかと考えている