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読書記録と日常のあれこれ。

ケニア旅行記 ~キベラ・スラム~

うだるような暑さの成田空港を出発しケニアへ。ドバイの乗り継ぎを経てジョモ・ケニヤッタ空港に到着したのは約20時間後。長時間のフライトでヘトヘトになりながら無事入管を通り抜け空港の外にでると自動小銃を肩から下げた警備警察と目が合い一礼。一気にケニアにきた実感が湧く。

 

到着待ちをしてくれていた弟家族と合流し、駐車場で車に荷物を積み込もうとすると見知らぬ青年が声を掛けてきて勝手にスーツケースを積み込もうとしはじめた。びっくりして弟家族に目くばせすると「手伝いは不要」であることを説明。それを聞いた青年は別の方向へ歩いていってしまった。勝手に手伝ってその分の駄賃を要求しようとしたらしく、日本では中々ない出来事に軽くジャブを喰らった気分になる。

 

空港を出発し、ケニア初の有料高速道路からナイロビ市内へ向かう。この高速道路は中国企業が投資・開発して約1.5年で竣工させたそうでその規模とパワー、スピードに驚かされた。
ただ、竣工したばかりなのと有料ということで利用している車は少なく、今後も事業として継続させていくための利用促進施策が必須だろうなと感じた。

 

高速道路からの風景

走ること数十分、高速を降りナイロビ市内に出ると車と人だらけ。車は自家用車やマタツと呼ばれる乗合いバスが多く、なかなか手荒い運転をしているように見える。道行く人たちも車に注意しつつ車道を横切るのは当たり前。車の方もそんな歩行者を気にしていてはやってられなとばかりに、うまく避けながらスイスイと進んでいく。これでよく事故らないな~、と変に関心させられる。

道端には様々な露店があり、食堂や果物屋などの飲食系だけでなく、スニーカー屋や下着屋、大型の家具屋なんかも軒を連ねていて見ているだけでも面白い。車道の中央分離帯にはピーナッツ売りやフルーツ売りが窓を叩きながら売り歩いているし、交差点の真ん中で大道芸人がアクロバティックな芸を見せ、信号待ちのドライバーにチップを求めたりしている。一言でいうとカオス。

でも、嫌な感じは無く、エネルギーに溢れていて人が「生きている」感じがする。そんな不思議な雰囲気を感じた。

 

道端の家具屋

カオスな一方で、ナイロビ市内は高層ビルなんかもあり、想像していたよりも発展している。ただ東京と比較するとまだまだで道路は土っぽいし街路樹もワイルドに生えていて自然がいっぱい。車でちょっと走ればナイロビ国立公園などもあり、大自然を満喫することができ、ちょっとした都会っぽさとのコントラストを味わうことができる。また、ケニアは赤道直下にありながら高地のため湿気もなく気候が最高にいい。年間を通じて20℃位らしいので過ごしやすさは抜群だ。

 

キベラ・スラム

世界最大級のスラムで約2.5㎢の面積に100万人以上が暮らしている。ググってみると仙台市の人口が約109万人らしいので面積比でどれだけ密集しているかがわかる。今回はケニア最大のNGO「SHOFCO(   https://www.shofco.org/」協力のもとキベラを案内してもらった。ちなみに、大統領選挙前後は治安の悪化が懸念され、キベラには近づけない可能性もあったが今回は無事に訪問することができた。過去の大統領選挙の際はキベラでも住民同士の衝突や暴動で死傷者が出たらしく、そんなタイミングでも訪問できたということでこの数年で治安が改善されてきたのだと思う。

キベラ一帯は勾配の激しい地形になっていて高地には今も稼働しているウガンダ鉄道の線路が横切っている。線路脇には露店がずらりと並んでいて服や靴、電子機器?なんかが販売されており、線路上を人やバイクが行き交っている。

今も稼働している線路

売り物の洋服

線路脇を下り居住区を目指し歩いていくと小さな橋があり、その間をゴミや汚水が流れている。そのゴミを鶏が啄んでいて相当に成長した鶏の姿はなんとも言えない感情を生み出した。

汚水やゴミの中に目を凝らすと複数のパイプが這っているのが見える。「スパゲッティパイプ」と呼ばれるもので生活用水が流れるパイプが不衛生な汚水やゴミの中をつたい、キベラの各家庭に流れているという。なぜスパゲッティかと言うと複数のパイプが複雑に絡み合っているから。

このパイプから水を盗むやからもいるらしく、雑にカットされてしまうためそのキズ口から汚水やゴミ等の雑菌が混入しそれらは生活用水として使われる。そうなると不衛生な状態の水が原因で伝染病などが発生し、スラムの住人に一気に広がってしまうというということだった。

 

 

このような状況のなかSHOFCOでは電線の施工方法を応用し、生活用水のパイプを空中から送る方式をキベラ地区で導入し衛生的な状態で水を届ける仕組みを構築している。ただ単に無料で配るのではなくMペサ(モバイルマネー)などで購入してもらうようにしていて、適正な価格で供給し経済的な仕組みとして根付かせようとしている。

次に訪れたのはITスキルを身につけることができるコンピューター教室。10畳程の部屋に十数人の子供たちが座り、PCとにらめっこしながら基本操作やOSの仕組みなどを学んでいる。キベラは電力供給が不安定なので訪問中も何度か電源が落ちてしまい、部屋の電気やPCがダウンしてしまっていた。そんな環境の中でもスキルを身に付け将来の選択肢を増やすためにこの教室に通っている子供たちが沢山いる。そして、希望生徒数に対して教室数が全然足りていない状況ということで、日本の教育環境との差を考えさせられたし、どれだけ日本の子供たちが恵まれているかを感じさせられた。

キベラの根深い問題として女性への性犯罪や家庭内暴力がある。政府黙認のこの地区では警察を頼ることもできず街灯のない小道で女性が襲われてしまうこともある。また、暗く狭い家の中で暴力を振るわれることもある。SHOFCOではそんな女性達を支援するため、鞄などのアパレルや雑貨作りの訓練や仕事の斡旋をしている。被害にあった女性達は職がないことで生活面で自立できず負のループから抜け出しにくい。でもスキルを身に付けられれば経済的な自立が可能になり負のループから抜け出すことができるためSHOFCOがその機会を提供している。

因みに、先に書いた給水所では夜間でも安全に給水ができるよう街灯を設置することで女性の性被害や暴力被害の抑止にも役立っている。暗がりで水を汲むことすら危うい状況だということを知り、あらためて、生まれた環境の違いだけでここまで過酷にならざるをえない現実とそれを知らずに育ってきた自分の無知と無力さに言葉が出なかった。

 

SHOFCOを設立したケネディはキベラ出身で満足な教育機会を得ることができないながらも努力の末、奨学金アメリカの名門大学を卒業し、キベラの環境改善と地元への恩返しとして精力的に活動している。SHOFCOは一時的なボランティアや寄付だけではなく、キベラに根を張り、コミュニティの一員として活動することで住民からも認められ、信頼を得ながら環境改善に取り組んでいる。

IT支援や教育活動以外にも病院や学校も運営しており、キベラ地区に無くてはならない存在になっている。一時的なボランティアや寄付が悪いとは思わないがそれだけでは片手落ちで、本当に必要なのは圧倒的な当事者意識とコミュニティの一員としてニーズを拾い上げ、それらを自立的かつ持続的な取り組みへと発展させていかないと意味がないのだなと強く感じた。

 

SHOFCO運営の図書館

最後に訪れた小学校では終業式の真っただ中で、女子生徒たちが元気よくを校歌?を唄っていた。急な訪問にも関わらず歓迎してくれて笑顔で手を振り続けてくれていたのがすごく印象的だった。この少女たちが今後も笑顔で暮らせるようSHOFCOやそれらを支援する人々の継続的なパワーが今後も必要になるため、微力ながら自分もできることから協力していきたい。

SHOFCOが運営する学校と給水所

IT教育にも注力

キベラの先に見えるナイロビ市内

SHOFCOのHPから寄付ができます

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