going

読書記録と日常のあれこれ。

パナソニック覚醒 愛着心と危機感が生む変革のマネジメント|読書メモ

パナソニックコネクトCEO 樋口さんの変革メソッドが凝縮された書籍。
文化×組織能力×戦略の観点からなにをどう変えたのか、その結果、どう変わったのかをざっくり把握することができる。大企業向けなのでは?と思いながら読み始めたが、規模の大小に関係なく応用できそうなことも多数あり非常に勉強になった。
以前「ドキュメント パナソニック人事抗争史」を読んだ際に、経営の神様と言われる方が起こした会社でも肥大化によるジレンマや世代交代の失敗、外部環境変化などの影響でここまで衰退してしまうのか、、、と思ったことを覚えている。
以降、パナソニックに関する書籍を読むこともなく能動的にキャッチアップしていなかったので、その時の印象のまま、苦しい状況が続いているのかな、と思っていたけどこの本を読むと大きく変わっているということを知り、認識が変わった。
樋口さんは本気でパナソニックを変えようとしていて、すでに一定の成果も残してる。外資を経験してグローバル競争の激しさを知っている樋口さんであれば、本当の意味での変革を起こせるのではないかという気持ちになって今後のパナソニックの成長が楽しみになった。

章立て

  • はじめに
  • なぜパナソニックに戻ることを決めたのか
  • 大きな絵を書く
  • カルチャー&マインドを変える
  • ビジネスモデルを作り直す
  • 事業立地を整える
  • 「もったいない日本」から脱却する
  • おわりに

メモ

私たちは「カルチャー&マインド改革」「ビジネスモデル改革」「事業立地改革」の
3階層でトランスフォーメーションを加速させていきました。

コッターやレビンの変革のプロセスをベースに樋口さん流を取り入れている感じがする。なにをするのも人なので人の心を変え、動かさないとなにもはじまらない。
ビジネスモデルや戦略は同時並行で考えつつも実行する順番を間違ってはいけない。

31歳のとき、希望していた社内留学制度でハーバード・ビジネス・スクールに合格します。これが人生を変えることになりました。

もともと内向きだった性格がこの留学を期に大きくかわったとのことMBAに関わらず、成長意欲と危機感を持って何かにチャレンジできる人はつよい。

私のキャリアは、目指そうと思って得たわけではないのです。

これは意外。でも経歴を見ると業界に一貫性はないし、他の経営者のように強い原体験があって大きな夢を昔から持っていたような話もないので本音だろうと思う。ただ、具体像が無かったとしてもぼんやりとありたい姿や目指すべきものはあったはずなので、各フェーズで最高の結果を残してきたからこそステップアップを重ねて今があるのだろうなと感じた。

聖域を作ってはいけない、戦略を作らないといけない

これはその通りだと思う。本気で変革を推進する際に障壁となるのは従業員が納得してついてきてくれるかどうか。よくあるのが変わることを恐れて反発するケースで、その会社に慣れていたり、変わることで自身に不利益(忙しくなる、覚えることがふえる、給与が一時的に減るなど)が発生するのを防ぐために保守的になってしまうなどが挙げられる。またそもそも人は変わることが苦手だということも理解しておかなければならない。

経営の怠慢は、社員を不幸にするのです。経営は戦略を絶対に間違ってはいけない。

重い言葉。”絶対に”というところに樋口さんの思想や覚悟を感じる。経営者はそれだけの重責を背負っているということだし、それを理解した上で経営をしている人は世の中にどれだけいるのだろうか?考えさせられる。

やらなければいけないのは、顧客目線で常に自分たちを見つめなおしていくことです。忘れてはいけないのは、誰かがお客さまと接点を持ち、モノやサービスを売っているから売り上げが立っているということです。

顧客目線、毎日唱えてもよいぐらい大事なこと。お客さまが喜ぶものを提供して対価を得ているからこそ企業が存続できているのだということは企業に関わるすべての人が絶対にわすれてはいけない。顧客と直接接点がない部門はここの意識が低くなり、意見も内向きになる傾向があるので注意。

ずっと同じ会社、同じ組織という生態系の中にいると、自分たちのやり方が正しいと信じ込んでしまうことが少なくありません。世の中には違う生態系がある、ということが理解できなくなります。

これもまさに。どんなに外に目を向けていて、かつ外のコミュニティから情報を得ていたとしても実際にその環境に身を置いたことがなければ頭でわかっていても動けないのではと思う。そうかんがえると副業を推奨している会社はこの部分がわかっていて中長期的に競争力を高めることができると信じて推奨してるのではと感じた。

フォロワーが次のフォロワーを生む

変革は長期戦でいきなり100%にはならない。まずは5%、10%とフォロワーを増やし、次のフォロワーへと伝播させることで大きなうねりを生むことができる。これも変革の定石でファーストフォロワーを社内でも影響力のある人物にする方法などがある。

ビジネスモデルを変えていくにあたり、考えたのは、コネクトはどんな価値を持ち、どんな力があるのかをきちんと定義して、それを組み合わせていくことでした。そこから出てきたのが、ソリューションというキーワード、レイヤーアップ(川下から川上へ)という取り組みでした。

現状把握は大事。SWOTであぶりだし、バリューチェーンを見直し、外部環境を俯瞰して位置取りをしたのだろうなと推察。

細かなことは指示しません。大きな方向感と期待感を、伝えていくだけです。あとは、任せていきます。なぜなら、そのスキルセットを持っているからです。

これがあるから任せられる。”スキルセットを持っているから”

上司はちゃんとわかってくれている、という構図をしっかり作ること。これが外部から人材を迎え入れるときには極めて重要になるのです。

マネジメント層を中途採用する際の注意点。マネジメント経験者なのだからこれくらいできて当たり前、自分で考えろ的な思考は入社してからある程度経過するまでは捨てたほうがよい。どんなにスキルフルな人でも慣れない環境でお手並み拝見をされると力を発揮できないこともある。その期間の評価でダメな奴というレッテルを張ってしまうのは双方もったいない。

よく言っているのは、「団子になるな」です。

主体性と独立心を持って仕事せよ。そうすれば成長できるし、自分を守ることにもつながる。

だからリーダーには、EQ的な要素が大事になってくると私は感じています。これが日本の場合は、より求めらるのです。「この人は、自分たちのために頑張ってくれているみたいだ」「この人のために、なんとか頑張ってやろうじゃないか」といかに思ってもらうか。こういうところで、ひとつにまとめることが必要になってくる。だから日本の組織運営は難しいのです。

EQについては永守さんも書籍の中でこれから求められる素養として書かれていた。ダニエル・ゴールマン、読み直そう。

端的に言えば、いい人であるだけではダメだということです。やはり思い切ったこと、厳しいことも実行できないといけない。

まさに、リーダーの条件の一つ。自分が嫌われようと総合的に考えてみんなが幸せになれるような意思決定をしないとだめ。難しいけど。

「愛される仕事をする」

松下幸之助さんの言葉。色々な意味が込められているし人により解釈は変わるだろうけど営業的に言えば、最終的に自社を選んでもらうために必要なこと。言い換えるとファンになってもらうということなのでファンマーケティングなんかも考え方としてはほぼ同じだと思う。40年以上前にこんなことを言っていたのだからやはり本質的な部分は大きくは変わっていなくて、ディティールや表面的な部分の変化や手段の変化だけなのだろうなと感じた。