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読書記録と日常のあれこれ。

ブロックチェーンの描く未来|読書メモ

ブロックチェーンの本質的価値と普及した先にどんな世界が待ち受けているのかを著者視点で書かれた書籍。ブロックチェーンに対する懸念やリスクは語られつつも、現在の中央集権型社会から自立分散型社会に変わることでの期待を感じられる内容になっている。他の書籍と同様に、現状のプラットフォームにより一極集中は終わり、個人への回帰が予測され、すでにビジネスとしてスタートしている事例もあり興味深かった。君主不在で機能するシステム自体は理想で面白いがそれらを活かすもころすも結局使うヒトなんだよなと感じた。
以下、振り返り用のメモとして。

書籍情報

著者 森川夢佑斗
発行 2018年8月15日
ブロックチェーンの描く未来 (ワニの本)

第1章 お金とビットコイン

  • ビットコインはお金の再発明
  • お金は、①価値保存 ②価値尺度 ③価値交換 という3つの役割を担っている
  • お金は、貸し借りの目印として生まれ次第に取り引きを担保するためのものへと昇華していった
  • 人類文明最古の貨幣システムは台帳という技術によって実現された信用の記録
  • 通貨は支払い能力を社会全体で信用することで誰に対しても譲渡できる借用書として発展した
  • 中央銀行の誕生により、債権・債務の発行と流通のほとんどが銀行という信用の専門家に取り仕切られるようになった
  • ビットコインは”サトシ・ナカモト”と名乗る匿名の人物によって「P2Pの電子的な現金システム」として発表された技術
  • キーワードは中央集権から自立分散への挑戦
  • ビットコインの技術的構成要素
    • 公開鍵暗号方式
    • P2Pネットワーク
      • 端末同士の相互通信・相互監視
    • 分散タイムスタンプサーバー
      • ダイジェスト値を連鎖させる
    • Proof of Work
      • 計算競争と勝利報酬による合意
  • ビットコインとは、ネットワーク内の取り引きを改ざんできない会計記録として、インターネット上の有志が共有し、維持し続けるためのシステム

記録とブロックチェーン

  • 古来より記録を管理することは一部の特権階級の営みだった
  • 記録が中央集権的に管理されると情報のコントロール権が所有者から失われ、増大した管理コストが利用者側に押し付けられるようになる
  • ブロックチェーンが合意しようとしているのは過去にネットワーク内で何が起きたか、という事実そのもの
  • ブロックチェーンの強み
    • 障害やエラーに強い分散システム
    • ネットワーク内の出来事に関する網羅的な記録
    • 記録の一方向性と改ざん耐性
    • 管理者不在の公開データベース
  • ブロックチェーン技術の変遷
    • 第1段階:お金=約束の記録
    • 第2段階:お金、記録(過去・現在)
    • 第3段階:お金、記録(過去・現在)、契約(将来)
    • 第4段階:お金、データベース、アプリケーション、プラットフォーム? ←2018年次点の状況
    • 第5段階:お金、データベース、アプリケーション+実用的多機能プラットフォーム

契約とイーサリアム

  • 契約は「法律に従って誰かが解決してくれるはず」という信用に補強されているにすぎない
  • 三者による仲裁は大きなコストを伴うため、信用によって相手を見定め不確実な取り引きを避けるようになっている
  • ブロックチェーンには仲裁を行う第三者は存在しないため、ソースコードだけが参加者たちが従う共通ルールとなり、機能する
  • スマートコントラクトに高い汎用性をもたせてプログラムを実装できるブロックチェーンを実現したのが「Ethereum(イーサリアムエセリウム)」
    • Solidityという言語とEVMという実行システムを用いて実現
  • これによりブロックチェーンは単なる記録技術の枠組みを超え、ありとあらゆるプログラムやアプリケーションの基盤として利用できる未来が示唆された
    • インターネット上のプログラムやアプリケーションのすべてを非中央集権化できるということ

第4章 ウェブと非中央集権化

  • 自由な通信網として生まれたインターネットが巨大企業による寡占と支配的な構造とっっており、ブロックチェーンはその構造を変える可能性を秘めている
  • Web3,0は独占的な中央管理者同士が地図の上で領土を奪い合うのではなく、インターネットという広大な空間を活かし、様々なプラットフォームが多層的に重なり、それぞれのプラットフォーム上を最適化しながら全体的をアップグレードしていく3次元的な世界
  • 非中央集権化の特徴
    • 一元的な管理者が存在しない=世界を管理する存在はいない
    • マシンもプログラムもダウンすることがない=誰かがいなくなっても世界は当然終わらない
    • データの所有者をユーザー本人が持つ=自分の知っていることは、自分にしか知りえない
    • 誰でも誰とで自由なやり取りができる=希望する相手と自由にコミュニケーションして、取り引きができる
    • 同じプラットフォームに利用しているため相互運用性が高い=みんなが1つの世界の基本的な物理法則を共有し、平等に利用できる
  • 既存のアプリケーションはサービス提供者が構築したシステムへアクセスし利用する
  • サービスを支えるシステムやインフラが提供者の所有物である以上、そこで発生する情報もアプリケーション事業者のものとなる(管理という意味で)
  • このため、情報や権利の非対称性が生じデータの書き換えや不正利用、漏洩のリスクが常に存在する
  • DAppsは公共のブロックチェーン上で構築され、実行されるアプリケーション
  • インターフェイスは提供者が準備する
  • 根本的なシシステム基盤はブロックチェーン上にある
  • そのため開発者がブロックチェーン上の出来事に介入したり、改ざんを行ったりすることはできない
  • 外部攻撃によりサービスに支障をきたすリスクも抑制でき、低コストで分散型のシステムを設計できる
  • ユーザーがDAppsを利用する際に生まれる情報は、「ユーザーだけしか知りえない情報」か「ブロックチェーン上で誰でも確認できる情報」の2つしかなく、サービス提供者だけが一方的に利用できる情報はない
  • 非中央集権的に運営されるアプリケーションに人々を巻き込むため、プラットフォーム型ブロックチェーン上では様々なトークンが発行されている
  • イーサリアムはいくつかの階層から成り立っており、それぞれの階層での技術開発が進むことでプラットフォームとしての役割を発揮していく

第5章 ブロックチェーンの課題と発展

第6章 ブロックチェーンユースケース

  • 金融機関の決済・国際送金
  • サプライチェーンのトレーサビリティ
  • 公共のデータベース(公証など)
  • 管理者不在のマーケットプレイス
    • エアビーやウーバーの駆逐
  • 美術品取り引き
  • 不動産取り引き
  • エネルギーのP2P
  • ポストAirbnbを目指す「BeeToken」ではプラットフォーマーへの直接の手数料が抑えられ、家を科すことで利益を得たいホストと安く借りたいゲストの互いの利益を最大化させることができる
  • 既存のプラットフォームはC2Cをうたいながらプラットフォーマーに依存する業界
  • イーサリアムの開発者はUberをなくして運転手が直接仕事を取れるようにする、と発言している
  • 広告不在、個人中心のプラットフォーム
    • これまでの記事メディアでは、メディアが主、ライターが従、という構造により、記事を見られることで発生する広告収入の多くを、広告業者やメディア運営者の仲介手数料として搾取されてきた
  • Web3.0ではお金の流れがライター主導に変わる可能性がある
  • Steemitでは、STEEMという仮想通貨をプラットフォーム内のライターや読者に報酬として流通させている
  • STEEMの量は将来ほかの閲覧者からも高い評価を受けるようになる記事を先んじて高評価すると大きくなる
  • こうして質や信頼性の高い記事をいち早く見つけ評価することへのインセンティブが生まれる
  • このような仕組みで質と信頼性の高い記事を評価するインセンティブが生まれ、ライター・読者にとって魅力的なプラットフォームになっていくことを狙っている
  • Primasや日本のALISといったプラットフォームサービスもこの流れから生まれている

終章 ブロックチェーンの描く未来

  • ブロックチェーン業界で重要視されるホワイトペーパーはルールそのもの、これから生まれる共同体の設計図
  • 発行される仮想通貨は価値基準
  • 自分のちからが発揮できる共同体を自分で選ぶ
  • 価値ある行動が正しく評価されより良いルールを創る