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読書記録と日常のあれこれ。

起業時代|読書メモ

読んだ本

freeeが出版した起業検討層向けの雑誌
起業時代 創刊号 (freee出版)

freeeについて

「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、統合型経営プラットフォームの開発・提供を行っている会社。会計ソフトが有名で一番の競合はマネーフォワード(おそらく)

マーケティング視点での考察

 この書籍はfreeeのコンテンツマーケティングの一環として、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ層をメインターゲットとして発売されたものだと考える。

すでにfreeeではオウンドメディア(記事型メディア)やSNSウェブ広告を展開しており、起業しようと考えている層にはある程度認知されており、検討が進んでいる層のツール(主に経理系)の選択肢として想起される状態にある。
ただ、現状の施策ではリーチできない、もしくは態度変容を促せない層に対する有効な施策を打てておらず、そこに課題を感じていた。
そこで目をつけたのが「雑誌」という媒体。

 「雑誌」の発行部数は年々下がり続けており、電子書籍への代替とSDGsの文脈でシュリンクしていくのはほぼ間違いない。
ではなぜ今このタイミングで「雑誌」を創刊したのか?
普通に考えると悪手に見えるかもしれないが、よくよく考えると合理的な理由が見えてくる。
 
 おそらく、freeeの顧客層はイノベーター、アーリーアダプターを中心に構成されていて、市場シェアを伸ばすためにはアーリーマジョリティ、レイトマジョリティ層を取り込んでいく必要がある。
アーリーマジョリティ、レイトマジョリティはどんな層なのかを想像すると、インターネットリテラシーがさほど高くなく、インターネット上の情報のみでは行動を起こさない層なのでないかと考えている(根拠なし)。
または、「いつかは起業したい」と考えているが一歩踏み出す勇気が出ない層をターゲットに据えている感じもする。
前者はタッチポイントを変えることでまずはリーチすることを目指し、その先での態度変容に期待する。後者は「雑誌」の中身を通じて起業のハードルを取り払うことで一歩踏み出す勇気を与え、行動に移すことを期待する。

「起業時代」の表紙には”ふつうの人がフツーに起業できる時代、はじまる”というメッセージが記されていて、ここに「起業時代」の思想と覚悟が詰め込まれているように感じる。

 これまで、起業は一世一代の大勝負でフツーの人が気軽にできるものではなかった。でも、今の時代は様々なコストが下がったことで一昔前と比較し格段に起業しやすくなっている。
また、起業の形もさまざまで全てを捨てて人生を掛けるというやり方だけでなく、パラレルワークやリスクヘッジしつつ起業し、起動に乗ったところでシフトする、という選択肢も出てきている。

「起業時代」は冒頭から先輩起業家のインタビューが並び、希望や明るい未来、こんな選択肢もあるんだなと感じさせる構成となっている。
そんな未来を見せた上で、具体的な起業に関する流れと手順がわかりやすく説明されている。
もちろんfreeeの雑誌なので同社のソリューションを絡めた説明も含まれているが広告色は薄く、自然に読み進める中で違和感なく触れる程度という印象を受ける。
巻末には”今年 新しい自分を はじめる人へ”というメッセージの中でfreeeのミッションとビジョン、起業を考えている人たちの心に訴えかける言葉が記されおり、ここまで読み進めた起業検討層の一部はfreeeに対するエンゲージメントは上がり、起業時に同社のソリューションを採用する可能性が高まっているのではないかと考えられる。

マーケティング手法としては雑誌「起業時代」のTVCMとリスティング広告、プレスリリースによる拡散が確認されている。
TVCMはマスへ一気に広めるには効果的で、そのCMを見た人が”起業時代”というキーワードで検索をする。検索結果にはリスティング広告として起業時代のキャンペーンページが上位表示され、自然検索上位にも同社のプレリやAmazonの販売ページが掲出され、(一定数の離脱はあるが)ほぼ取りこぼすことなく「起業時代」関連のページへと遷移させることができる。
遷移したユーザーの中で起業意欲が高まってきているユーザーは660円(起業ノウハウ本でこの値段であればさほど高くないと思われる)であれば買ってみるか、となり購入する。
購入したユーザーは雑誌の表紙にある”ふつうの人がフツーに起業できる時代、はじまる”という言葉に刺激を受け、読み終わる頃には起業意欲がより一層高まっている、というカスタマージャーニーが想像される。

これも想像でしかないが、おそらくfreeeは「起業時代」の企画を1〜2年前から検討しており、タイミングを見計らっていたのではないかと思う。
コロナの出口が見えない中でスモールビジネスを通じて日本経済を活性化させたいという想いもあったのかもしれない。
そして、起業時代を含むコンテンツマーケティング施策においては、ゼロからペルソナを作り、カスタマージャーニー上をなんども行き来させ、各フェーズ毎の感情・思考を想像し掘り下げた上で、タッチポイントや施策に落とし込んでいったのではないだろうか。

考察というか冗長な想像になってしまったけど、TVCMを見て気になり、今このタイミングで雑誌なんだ!?ということで更に気になり、今すぐ起業予定はないけど、どんなマーケティング戦略のもとこの施策を行っているのかが気になったので購入し、ブログに書きなぐってみた。

たぶん、色々間違っていそうだけど、正解不正解ではなく思考訓練の一環なのでツッコミはご容赦を。