元MITメディアラボ所長 伊藤穰一さんが2018年に執筆した書籍。AI、仮想通貨、ブロックチェーンなど、広いテーマは伊藤さんの視点で解説されている内容。約4年前の書籍ではあるもののそこまで陳腐化してる感じはなく今でも違和感なく読めると思う。教育の部分は興味深く、時代が変わっているのに日本国内の教育方針があまり変わっていないことには少し危機感を覚えた。その他、印象に残った部分を以下にメモしておく。
第1章 「AI」は「労働」をどう変えるのか
- 規模こそすべてのシリコンバレーに陰りが見えてきている
- 1つに集中させるのではなくたくさんの組織やサービスに分散させた方が「レジリエンス(回復力)」が高い
- テクノロジーが社会を良くするわけではない
- AIは労働のすべてを代替しない(できない)
- ミー二ング・オブ・ライフ (人生の意味)が重要になる
- 自分の生き方の価値を高めるためにはどう働けば
いいのか、という新シセンシビリティが注目されている
第2章 「仮想通貨」は「国家」をどう変えるのか?
第3章 「ブロックチェーン」は「資本主義」をどう変えるのか?
第4章 「人間」はどう変わるか?
- 新たなテクノロジーの登場でこれからは「なぜ?」が世の中にあふれることになる
- トランスヒューマニズム=科学技術を使って人間の身体や認知能力を進化させ人間を前例のない状態まで向上させようという思想
- 歩ける距離を大切にする「ペデストリアン・シティ」が理想?
- ※この思想は安宅さんのシン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成 (NewsPicksパブリッシング)に出てくる風の谷に似ている
- ジェイソン・ジェイコブスは都市にとっていちばん大切なのは住む人とネイバーフッド(ご近所さん)の文化だと主張している
- ローカル・リテラシーから学べることがたくさんある
第5章 「教育」はどう変わるのか?
- アメリカではいまを生きる教育「アンスクーリング」が新たな潮流を生んでいる
- アンスクーリングには自発的な学習という哲学があり、無理やり型にはめたり一律で物事を教えたりはしない
- 日本ではシュタイナー教育やモンテッソーリ教育が比較的知られているがそれとの違いは子供の自由な領域が事前に定義されているかどうかにある。アンスクーリングは自由の領域に制限がない
- 生きると学ぶの2つが同じものであるという解釈のうえ、子供自身に自分の生きがいを定義させるのがアンスクーリング
- コンペディションよりコラボレーションが大事
- いまを生きる
ほとんどの親が「子どもたちのいましていることは、将来に向けての準備じゃないと意味がない」と考えているようです。親は子供のどんな「遊び」でも、「勉強」に結びつけてしまうのです。「将来お金がたくさんもらえるように」「将来好きなことができるように」と「いま」ではなく「未来」を生きることがもとめられるのです。
しかし、アンスクーリングはまったく逆です。アンスクーリングは子どもが経済を支える人間になるよりも、自分のなかに幸せを見つける、ということが基本的なアイデアです。自分の人生における「生きがい」を考えることが、本来のアンスクーリングの哲学に近いと私は考えます。
- マインドフルネスの考え方も近い
- 大人と子どもがお互いから学ぶ
第6章 「日本人」はどう変わるべきか?
- 日本人はプロセスに時間をかけすぎる
- 責任者を決めずにスタートしやたら細かいところにこだわり時間を浪費する
- 日本人が何かの行動を起こすきっかけとして、大事なのは「空気」
- よくも悪くも「空気」に支配されやすいということ
- これは「空気」の研究 (文春文庫)にも書かれていた
- 一般的に怒りを起点とするムーブメントは感情的になりすぎて暴力的になりがち。しっかりとその本質を見極める必要がある
- トランプ政権は怒りや憎しみをパワーに変換することに長けていた
第7章 「日本」はムーブメントを起こせるのか?
- ヒッピーカルチャーはビートルズやグレイトフル・デッドの音楽、ドラッグの影響などがぶつかり合いながら進化した
- たいていの場合、社会がよくないとき、アートは良くなる
- たしかにバンクシーもめちゃくちゃ注目され、評価されている
- まずはマインドセットを変えることが大事
- 100年単位のパラダイムシフトは文化から生まれる。アート、ファッション、音楽が重要な責任を持っているということ
<海の波>が起きるとき、シンクロしていない小さな波がつながることで、シンクロナイズドして、そして大きな波になるのです
- いまを生きる意味を見つけよう。思い立ったら仲間たちとともに行動しよう