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読書記録と日常のあれこれ。

脱キーワード思考のコンテンツマーケティング[2022年版]|読書メモ

日本において、「コンテンツマーケティング」は、「検索流入を得るために、検索エンジンを意識したコンテンツを量産する手法」、すなわちSEOの手段という意味で、2014年頃から注目を集めました

”はじめに”ではこのように書かれており、2022年時点でも同様の考え方のマーケター、ウェブ担当者が多いのではないかと思う。
しかし、本来であればコンテンツマーケティングで扱うコンテンツの1つがウェブサイトであり、そのWebサイトの情報をユーザーに届ける手段の1つがSEOとなる。すなわち、コンテンツマーケティングSEOの上位概念であり、SEOよりも大事なのは言わずもがな、と筆者は述べている。
至極真っ当な意見だなと感じた一方で、わかっていてもSEOドリブンな方針に走ってしまいがちな人が多いのが現状だと感じている。それは過去の歴史が強く関係していて、間違った認識でコンテンツマーケティングを捉えたまま業界に嘘か真かわからない情報が未だに氾濫しているからだと考える。
本書では日本国内のコンテンツマーケティングに関する誤った認識についての現状とその背景、そこから脱するためにはどうすればよいのかが書かれている。
マーケティングに関わる人は必読の書籍なので気になった方は手にとってみることをおすすめする。
以下、振り返り用のメモとして。

書籍


第1章 コンテンツマーケティングとは

米国CMIでは次のように定義されている

コンテンツマーケティングとは、「ユーザーに有益なコンテンツを継続的に提供することで、ブランドとの関係性を構築し、商品やサービスへの理解を深め、最終的に意思決定を後押しする施策を指す」

  • ここでいうコンテンツは広告LPのような直接売上や成約に結びつけるものに限らない
  • ブランド認知や教育・啓蒙、社会課題の提起、商品・サービス購入の意志決定を後押しする、選択理由を与えるものなど多岐にわたる
  • コンテンツマーケティングSEOという考え方は間違いでありSEOはコンテンツマーケティングのいち手段でしかない
  • ここを履き違えている人が多いのが国内コンテンツマーケティング市場の現実
  • 今日の消費者は購買ファネルが示すような順序通りに購入に至るわけではない
  • 検索や広告、SNSなど、オンライン・オフラインの様々なチャネルで情報接触をしながら検討を進め購買に至る
  • そのため、コンテンツマーケティングの重要性が増している

Googleがコンテンツ品質を評価するようになった」から「Googleのためのコンテンツを制作する」という理論は成立しない点に注意してください。これが世界中のSEO界隈におけるもっとも大きな誤解だと断言して差し支えないでしょう。

「有益な」「価値ある」コンテンツというのは、そのコンテンツの接触前後でユーザーが変化するーたとえば、そのサイト(ブランド)に好印象を持つ、そのサイトが価値ある存在と認める、そのコンテンツのおかげで商品やサービスの調査検討がはかどるーという意味です。

  • content is king
    • まずは価値あるコンテンツを制作する
    • SEOはコンテンツの発見性を高める手段でしかない
    • 価値あるコンテンツ→SEOという順番
  • SEO目的で作るコンテンツはGoogleのためのコンテンツ制作を目的化しがちでそれでは本末転倒
  • Googleのためのコンテンツは金太郎飴のような量産型になりがち
  • そうならないためにはSEOのKPIとコンテンツマーケティングのKPIを切り分けて考えること
  • コンテンツマーケティングのKPIの中にSEOの要素が含まれる

海外ではSEO担当者とコンテンツマーケティング担当者を分けるか、もし兼任させる場合は、SEO関連のKPIを除外する、または検索順位を見せない(順位成果を人事評価に含めない)、あるいはWeb解析業務を持たせてWebサイトの品質改善に自然と目を向けさせるなどの工夫をしていました。

SEOはあくまでも目的達成の手段であって目的ではありません。また、検索エンジンがよいサイトと判断するための条件としてコンテンツの存在が必要であることは事実ですが、コンテンツはSEOのために存在するのではありません。

コンテンツはデジタルマーケティングにおける重要なアセット(資産)です。SEOという狭い視野を捨て、オーガニックトラフィックSEO、ソーシャル、そのほかの自然トラフィック)全体を最大限に増やすという視点で、適切なKPIを設定し取り組むことで、ビジネスインパクトをより大きくすることができるでしょうか。

  • SEOは検索行動をとったユーザーにしかリーチできないことを認識しておく
  • 検索語句が想起できないユーザーやそもそも検索以外の手段で調査するユーザーもいる
  • 楽天Amazon、インスタ、ツイッターなど

第2章 ここが間違っているコンテンツマーケティング

  • 検索キーワード調査ツールから一覧リストを作ってコンテンツの方向性を決める手法は間違い
    • 問題点① 仮説も立てず与えられたデータのみで想像してしまう。そうなると無味乾燥な刺さらないコンテンツになりがち
    • 問題点② 検索チャネル向けのコンテンツは充実するが検索以外のチャネルで接触する可能性があるコンテンツがおそろかになってしまう。そうなると検索しないユーザーを取りこぼしてしまう
    • 問題点③ 検索キーワード調査ツールは不完全なものでありそれに依存して計画を立てても実は間違った施策を選択する可能性が小さくない。万能ではない点を留意して活用すること
  • Googleキーワードツール(キーワードプランナー)は広告主のためのデータであり、加工されている

Googleが提供するキーワードデータは、もともとGoogle広告を利用する広告主のために提供されているデータです。GoogleSEOで活用することを拒否していませんが、決してその用途のために無料提供されているデータではありません。

  • キーワードプランナーで表示されているデータはロングテール図で言うとヘッドからミドルの頭に入るぐらいしかカバーできていない
  • SERP上位から意図を把握する方法は間違い
  • そもそもGoogleの検索結果が正しいという考えも間違い
  • 検索エンジン保有するデータベースの中に適切な情報がなくても、その中でマシなものを上位表示する
  • ゴミ箱から取り出せるのはゴミだけ
  • なので検索上位コンテンツの模倣は悪手であり、他社より優れたコンテンツを提供することが定石
  • Googleオートコンプリートから一覧リストを作ってコンテンツの方向性を決める手法は間違い
  • 2,3の単語からではどういう文脈で何を探しているのかを推察できず、できても精度の低い仮説になってしまう
  • また、オートコンプリートは現実に検索されていない語句も表示される仕様になっている
  • Googleがいいと判断してくれそうなコンテンツを作るのは間違い
  • 前提としてパンダアップデートはGoogleに媚びたコンテンツの評価を落とすことを目的として行われた
  • 日本のSEOでは未だにこ媚びたコンテンツが作られているがその理由はキーワードによってはある程度効果が出てしまうため
  • 日本企業のウェブサイトはコンテンツ量が少ないもしくは持っていないため、持っていない企業はコンテンツを投下するだけで一定程度までは成果がでる
  • しかし、他社も同様の手法を行うので飽和状態になり頭打ちになってしまう
  • そのためGoogleに媚びたコンテンツを作ると中長期的には破滅する

第3章 キーワードデータを活用するための思考法

  • 目的は読者を理解することであってキーワードデータは手段のひとつ
  • 誰が、いつ、どんな場面で、何を、なぜ、どのように、なにをしたいのか、を追求するに尽きる
  • 状況を具体的に想像できればストーリーテリングでメッセージを伝え、読者を動かすことができる
  • まずは仮説を立てる
  • 次にトレンドを理解しキーワードデータを見る
  • その後洞察しインサイトをあぶり出す
  • 最後にインサイトをコンテンツ制作に活かす

第4章 コンテンツデザインの手法

コンテンツデザインは、「ユーザーの最終目的」(検索の瞬間の目的ではなく最終的に獲得したい体験)と「検索したいシーンと文脈」(誰が、どんな状況で、なぜ、何を、どのよに探したいのか)を定義することで、ユーザー体験の観点から望ましい情報の量、形式、デザイン要件を定義していく考え方です。ユーザー視点のコアバリュ-を定義し、それを実現することを念頭にコンテンツ制作を進めていけば、Googleのために制作された誰も満足しないコンテンツの氾濫を防ぐこともできるでしょう。

  • 検索エンジンではなくユーザー中心のUX/UIデザインに意識を向けること
  • コンテンツに求められう必要条件を定義し、制作・編集に携わる関係者と共有すること
  • ユーザーの行動を点ではなく線で捉え、ユーザージャーニーの段階ごとに何のメッセージを、どのチャネルでどのような方法で伝えればいいのかを明確にすること

SEOだからと単純にテキスト中心の長文を作るのは間違いです。動画、画像、チェックリスト、マンガ、会話形式とさまざまなフォーマットから、ユーザーの文脈にあわせて最適なものを検討してくみてください。今日のGoogleは、良いページであればインデックスされる限りどのフォーマットでも検索上位に表示するということを知っていれば、テキストに固執する理由はないはずです。

どれだけ労力と時間をかけて、自分が高品質だと信じるコンテンツを公開したとしても、その公開直後からコンテンツは時間経過とともに変化していきます。なぜなら、私たちの住む社会は常に変化しており、その変化によりコンテンツとその受信者(ユーザー)の関連性に変化が生じるからです。

  • コンテンツ品質管理について
    • ①運営メディアに影響しうる「イベント」をタイムリーに把握できる仕組みを構築する
    • ②「イベント」が発生したとき、更新対象とりうる運用コンテンツを即座に抽出できること
    • ③更新候補となるコンテンツについて、基本方針(加筆・追記・修正・削除・ページ自体の廃止など)と、編集方針(どの範囲を、どのような趣旨で編集するのか)を判断するためのツールを用意してチームメンバーで共有する
  • 編集カレンダーを用意することで、コンテンツの必要になるタイミングの把握と社内リソースの最適化、ネタ切れ防止等の効用がある
  • カレンダー形式で埋めるとユーザー目前が生まれSEOと異なった切り口で自然と考えられるようになる
  • 修正するページの選択基準
    • 直近の閲覧数:Web解析ツールなどを利用して直近の閲覧するから対象を絞り込む
    • 読者への影響度:不適切な情報がある場合は即座に対応する
  • 大まかな変更方針を決める
    • コンテンツの前提が崩れる場合、ページ全体を編集し直すまたはトピックスで制作し直す
    • ページ内の該当箇所のみ編集し直す
    • ページ内の先頭や該当箇所に注意事項を掲示する
    • 該当ページの公開を一時停止する
  • 検索アルゴリズム更新時におけるコンテンツの見直しは判断が非常に難しい
  • 長期的にはアルゴリズムに振り回されずユーザーの期待以上のものに改良し続けるのが最善策
  • 自分のページに問題があると疑うのではなくGoogleが考える人がよいと考えるページの判断基準を見た脚ているかを見極める
  • このあたりは別著「Googleコアアップデートの読み解き方」に詳しい

一方、欠けていない場合も、やはり「様子見をする」という判断をしてください。読者の中には、それは無責任でありビジネスの放棄だと考える人がいるかもしれません。しかし、あえて厳しいことを述べますと「そもそもオーガニックトラフィックSEO、ソーシャル、そのほかの自然トラフィック)」といいう、企業がコントロール権がない領域で確実性を求める、その発想が愚かである」ことを理解しなければなりません。確実性を求めるなら広告を選択すればいいのです。

第5章 海外事例からの見るこれからのコンテンツマーケティング

  • GSKはユーザーインサイトを捉え、検索以前のニーズからコンテンツを用意しユーザーへのリーチに成功した

コンテンツは目先の利益獲得という短期思考で行うものではありません。ユーザーとの関係性を中長期的に構築するという視点で考えなければ、コンテンツはもっと多くの価値を創り出せます。とりわけオーラルヘルスケア製品はドラッグストアの棚を覗くとさまざまなブランドが並んでいます。そのなかで特定のブランドを選んでもらいたいのであれば、ユーザーの課題と結びつけながら選んでもらう理由を提示し、受け入れてもらう必要があります。歯磨き粉なんてなんでもいいと思っているユーザーに、実は違いがあることをコンテンツを通して知ってもらうことは、マーケティングとして理にかなっていると言えるでしょう。

  • SEOに強いコンテンツ、という発想自体を捨てること
    • ネット検索は情報アクセスインフラの中核
    • つまり、ネットで発信する情報は検索性がたかいものにするのが大前提
    • なので、SEOに強いという発想自体がすでにズレていると言える
    • SEO云々ではなくコンテンツを通してどんな価値をユーザーに伝えたいのか、それを伝えるためにどのようにデザインすべきかを考えること