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読書記録と日常のあれこれ。

コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える|読書メモ

IGPI富山さんの書籍。コロナの影響でDXという言葉がバズワード化しているが、そもそも会社が変わらないとDXなんてできっこない、おおまかに言うとそんな内容が全6章に渡って詳細に書かれている。日本企業が成功してきた歴史的背景から現在では世界的に負け続けている原因が説明されており、かなり納得度が高い。「DXが必要」と言つつ変わることができない企業経営者や命を受けたDXを担当者は一読の価値ありだと思う。以下、印象に残った部分を見返す用のメモとして。

第1章 今こそ「日本的経営モデル」から完全決別せよ

  • かつての日本企業の強さは、同質的で連続的な組織モデルにあり、日本企業が行っていたのは、それまで世界最大の工業国であったアメリカの既存産業をリプレイスして洗練させていただけに過ぎないとも言える。日本が勝ってきたモデルはオペレーションの改善・改良の世界での戦いだったと言い換えられる
  • これは時代が改良型イノベーション力によるキャッチアップ型の競争モデルが長期に渡り有効であり、日本企業の組織モデル、日本的経営モデルがとても適していたからである
  • 新卒一括採用、終身年功制といった同質的で連続的、固定的メンバーで構成される組織集団、しかも欧米先進国よりは安い賃金で勤勉且つ互いに協力的に働いてくれる組織集団だったことがこの奇跡を可能にした
  • 日本を追い込んでいっった歴史的な変化(1) グローバル化
    • ベルリンの壁天安門事件という歴史的大事件が起きたことにより東欧圏と中国圏という巨大な人口と巨大な人的資源を持っている経済圏が世界の市場経済に入ってきた。この時期を境に中国が「世界の工場」として、急速に日本に取って代わっていくことになった
  • 日本を追い込んでいっった歴史的な変化(2) デジタル革命
    • デジタル技術の発達を機にビジネスゲームの基本ルールが変わり、産業のアーキテクチャが変わり、野球からサッカーに変わるほどの破壊的イノベーションが既存プレーヤーに襲いかかり、若くて小さいプレーヤーが取って代わられた
  • 日本的経営モデル、日本的「カイシャ」モデルとは何だったのか?
    • 主要な構成要素は終身雇用、年功制、企業別組合の3つ
    • 主に大量生産型の製造業を舞台として、集団共同作業を効率的にこなし、長期持続鉄器な改良・改善を延々と積み重ねる基本戦略モデルと、こうした組織人事経営モデルとの相性は抜群であり、当然経済的な整合性、持続性を持つことになり、超長期にわたる終身雇用と年功賃金の約束事は果たされ、日本企業のカタチ(著者はこれを「カイシャ」と呼ぶ)が個々人の人生のカタチまでをも規定する力を持っていた
  • 日本的経営の神格化と自己目的化、社会固定化の進行|「もう欧米に学ぶべきことはない」
    • 試験偏差値の均質な学歴競争を経て、新卒一括採用で終身年功制のサラリーマンとなり、同質的、連続的、固定的なメンバーので一つのカイシャで集団的な改良的イノベーション力、オペレーショナルエクセレンスで延々と戦い続ける・・・これが「日本的経営」モデル、日本的「カイシャ」モデルによる戦い方であり、これが1960年代から30年近くにわたり極めてうまく機能してきた
  • あらためて、構成要素を細分化すると
    • ①人事組織管理
      • 同質性、閉鎖性、固定性、新陳代謝サイクルは40年、制度の一元性、終身雇用
    • ②組織構造と運営
    • ③事業戦略経営
      • 連続的改良・改善型競争、自前主義競争
    • ④財務経営
      • 財務経営は財務経営、事業経営は事業経営
    • コーポレートガバナンス
      • サラリーマン共同主義ガバナンス
    • 端的に言うと、外壁は極めて厚く排他的で、内部構造は曖昧で柔構造になっているのが「カイシャ」である
  • メイド・イン・ジャパンがデザインド・イン・ジャパンに転換できない硬直性
    • カイシャは要素が広範化して数が多くなり、それらの相互関連性が強まるほど、実は大きな改造が難しくなるという欠点がある
    • 磨き上げられたオペレーションが変革の足かせになったり、年功的階層構造は年著者よりも若年層が多くいなければ維持できなくなり、結果名ばかり管理職が増え、過剰な関節固定費を抱えるなどが一例である
    • 環境変化がゆるい状況であれば、カイシャは強い。あうんの呼吸で改良的アプローチがなされることで対応でき、組織内部構造の曖昧さ、柔軟性、すり合わせ型の調整能力が有効に機能するため
    • しかし、それらを超える大きな組織能力の変異を求められたとき、複雑に擦り合わされ、匠の技で緻密に作り込まれ、わかっている者同士で運営されるカイシャのカタチは脆さを露呈する
  • 産業構造のスマイルカーブ化
    • デジタル革命が押し寄せた産業には顕著にスマイルカーブ現象が起きる
    • バリューチェーンの川上と川下にいるプレイヤーは付加価値を生み、そこに特化できるプレーヤーは多くの利益を取り込むことができる
    • しかし、その間に挟まるレイヤーの付加価値率は低く、薄利体質に甘んじてしまう
  • 日本的経営からの決別|経営者よ破壊王になれ!
    • 人類の社会的進歩の歴史は革命の歴史であり、革命とは破壊と創造である
    • コロナショックにより、意図せず訪れた最大級の破壊性に乗じて変化できるかできないかが企業としての生命線をわけることになる

第2章 両利き経営における日本企業の現在地

  • 戦略は死んだ|戦略は組織能力に従わざるをえない時代
    • 結局、組織能力自体をもっとも重要な経営対象として、その可変性を大きくしない限り、持続的に競争優位を保つことは難しい時代に入っている
    • 今や現実の戦略は組織能力の従属変数であり、急速に変転を続ける最適戦略を打ち続けられる組織能力を持っていることが真の競争優位性の厳選となる
  • 両利きの経営
    • イノベーションの時代を経営するには、一方で既存事業を深化して収益力、競争力をより強固にする経営と、イノベーションによる新たな成長機会を探索しビジネスとしてものにしていく経営の両方が求められる
  • 現在地の総括|頭では理解しつつあるが、心と体は「ごっこ」の段階
    • 日本企業の平均的な現在地は、頭では会社のカタチ、組織能力についての大きな変容の必要性、すくなくとも、以下3つの必須条件(本業の稼ぐ力の最大化、事業と機能ポートフォリオの新陳代謝能力工場、組織能力の多様化・流動化)をクリアするための変革に踏み出す必要性を理解しつつあるが、心と体がまだごっこから抜け出せていない状態
    • 既存事業の深化バイアスに負けず稼ぐ力を最大化しながら右肩上がりに成長を続ける力は容易ではない

第3章 CXビジョン-目指すべき会社のカタチ、持つべき組織能力とは

  • 戦時における社長の条件
    • ザ・ラストマンをできるかどうか
    • 戦場で最後の最後まで指揮官として戦って踏ん張れるか。撤退戦になるとしても、撤退を背負いきれるかは社長の胆力次第
    • これは後天的に身につく能力であり、どれだけ修羅場をくぐり抜けてきたかが大きく影響する
  • CX度合いを測る指標は世界中の優秀な若者から選ばれるかどうかである
    • 聖域を作らず、優秀な人材から選ばれるための最大限度努力を経営者は行うべし
    • コンフォートゾーンを自ら破壊し、組織の新陳代謝を促せ

第4章 CX=「日本の会社を根こそぎ変える」を進める方法論

  • まずは長期(10年後)CXゴールを時間軸、機能軸で設定する
  • ゴールとその時点での会社のカタチを新憲法の項目に関わるKPIに含めて設定し、そこから5年ほどバックキャストして中間ゴールの会社のカタチを描いてみる
  • いつどこで何を仕掛けるかについてのきれいなロジックや方程式はない。変化に機敏動けるものが勝つ
  • CXは10年戦争。腰を据えた長期的取り組みが必須
  • 真のゴールは持続的なCX力の獲得|本質的な競争優位
    • 今はVUCAの時代
    • ダーウィンの進化論における適者生存の通り、時代環境に過剰適応した者ではなく、環境変化に対して自らも変化適応する力を持った者が生き残る。CXも同様で環境変化に適応する能力の獲得が真の目的と言える

第5章 日本経済復興の本丸-中堅・中小企業こそ、この機にCXを進めよ

  • GDPの伸びしろとして大企業は天井が見えており、中堅・中小企業にこそ伸びしろがある
  • 中堅・中小企業の低労働生産性、低賃金構造は日本の経済成長力を押し下げている
  • スマイルカーブの右上か左上に駆け上がる意思決定が必要
  • 中小企業も同様に新憲法の制定と実施が必須

第6章 世界、国、社会、個人のトランスフォーメーションは、どこに向かうのか?

  • 世界は相対化と流動化が進む=人々は答えのない時代を漂流することになる
  • 株式会社の耐用年数が迫ってきている可能性がある
  • 個人の働き方もトランスフォーメーションされる
    • 業を持っている人材が重宝される
    • やりたいこと、できること、やるべきことが重なる領域を見つけよ