ワークショップにおけるファシリテーションスキルだけでなく、議論の骨格を形成するための本質的な問いの立て方や、課題設定についての考え方を学べる書籍。章ごとに具体例を交えて記載されており、最終章では実例も紹介されているので具体的なイメージも湧きやすい内容となっている。
以下、自分用の読書メモとして。
第1章 問いのデザインとは何か
- 「問い」の定義:人々が創造的対話を通して認識と関係性を編み直すための媒体
- 問いの7つの基本性質
- 1.問いの設定のよって、導かれる答えは変わりうる
- 2.問いは、思考と感情を刺激する
- 3.問いは、集団のコミュニケーションを誘発する
- 4.対話を通して問に向き合う過程で、個人の認識は内省される
- 5.対話を通して問に向き合う過程で、集団の関係性は再構築される
- 6.問いは、創造的対話のトリガーになる
- 7.問いは、創造的対話を通して、新たな別の問いを生み出す
- 問いのデザインの手順
- 1.課題のデザイン=問題の本質を捉え、解くべき課題を定める
- 2.プロセスのデザイン=問いを投げかけ、創造的対話を促進する
- 質問と発問との違い
問う側 | 問われる側 | 機能 | |
---|---|---|---|
質問 | 答えを知らない | 答えを知っている | 情報を引き出すトリガー |
発問 | 答えを知っている | 答えを知らない | 考えさせるためのトリガー |
問い | 答えを知らない | 答えを知らない | 創造的対話を促すトリガー |
第2章 問題を捉え直す考え方
- 問題とは何か?
- 何かしらの目標があり、それに対して動機付けられているが、到達の方法や道筋がわからない、試みてもうまく行かない状況のこと
- 良定義問題:問題のスタートとゴールが定まっていて到達までのプロセスがはっきりしている状態(解き方がはっきりしている問題)
- 難定義問題:問題に対する解が2つ以上ある可能性があり、目標がはっきりしない状態
- 何かしらの目標があり、それに対して動機付けられているが、到達の方法や道筋がわからない、試みてもうまく行かない状況のこと
- 当事者の認識によって、問題の解釈は変化する
- 人間は目先の問題状況を解決しようと試行錯誤しているうちに、いくつもの暗黙の認識に囚われ、問題の本質を見誤ったり、問題をすり替えてしまったり、特定の偏った認識から別の新たな問題を生成してしまったり、無自覚のうちに”自分本位”に問題を解釈してしまうので注意が必要となる
- 関係者の視点から問題を捉え直す
- 問題解決においては当事者の他に関係者が複数人いるケースが多い。そのため、当事者だけでなく、他の関係者目線でその問題がどう見えているのかを俯瞰して捉え直す必要がある
- 課題の定義
- 本書においては、関係者で解決すべきだと前向きに合意された問題のことを課題と呼ぶ
- 課題設定の罠
- 自分本位
- 自己目的化
- ネガティブ・他責
- 優等生
- 壮大
- 問題を捉える思考法
- 素朴思考
- 素朴な疑問を投げかけながら問題の輪郭を掘り下げていく考え方。「なぜ?」「どうして?」などの5W2Hをベースに思考を進め、好奇心を持ちながら問題に対する理解を深めていくイメージ
- 天邪鬼思考
- ひねくれた視点から物事を捉える思考。認識をあえて批判的に捉え、語られていない盲点や物事の裏側を探り観察することであらなな視点やアイデアを生み出すことを目的とする。但し、言い方や使い方には注意する
- 道具思考
- ここでいう道具とは知識やルールなど概念的な道具のことを指す。◯◯さんだったらどう考えるのか?とさまざまな分野の専門家のかを思い浮かべながら問題を捉えようとする行為も道具思考の一種
- 構造化思考
- 問題状況を構成する要素を俯瞰し、構成要素同士の関係性について分析・整理し、問題を構造的に捉える考え方のこと。複雑な問題であればあるほどその要因には複数の要素が絡むため、問題を1つのとして捉えるのではなく、要素分解してその関係性をブレイクダウンしていく手法
- 哲学的思考
- 物事の本質を捉えるための手法。絶対解はないが、関係者間で互いに納得できる共通理解に到達することを目標とする。本質を探るためには「本質観取」という手法を用いる。
- 本質観取を進める手順
- 1.体験に即して考える
- 2.問題意識を出し合う
- 3.事例を出し合う
- 4.事例を分類し名前を付ける
- 5.全ての事例の共通性を考える
- 6.最初の問題意識や疑問点に答える
- 素朴思考
第3章 課題を定義する手順
- STEP1:要件の確認
- 要件とは、要望、理想的な状態、問題に関する制約、関係者情報、使える資源、予算、期間などを指し、これらを確認し、整理する
- 現状と理想のギャップを把握する
- ギャップを埋める手段が課題の設定とリンクしているかを確認する
- 当事者が考えている目標と関係者にとっての目標が一致しており認識齟齬がないかを確認する
- STEP2:目標の精緻化
- 目標設定が曖昧なまま課題を定義しようとするとピントのずれた課題設定をしてまうリスクがある
- 目標の解像度を上げるためには、期間・優先順位・目標の性質の観点から精緻化すると効果的
- 具体的には、期間によって、短期・中期・長期の目標にブレイクダウンする
- 優先順位を付けて、段階定期似整理したり、複雑な目標を分割する
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- 目標のゴールは、理想、現実、最低限に分けて整理することで、あれもこれもやりたいと思う顧客に対する牽制(本当に解決すべき課題の取捨選択にも)になり、プロジェクトのリスクヘッジにもなる
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- 目標の性質によって、成果目標・プロセス表・ビジョンの3種類に整理する
- 成果目標とは設定した期間において最終的に到達したい個人や組織の状態や、最終的に生み出したい青果物の要件や質を規定したもの
- プロセス目標とは、成果目標にたどり着くまでに、問題状況の当事者たちにどのような気づきや学習が生まれると望ましいか、当事者たちの間にどのようなコミュニケーションがうまれえると望ましいか、どのような関係性を重視したいか、など、プロセスに置いて重視したい目標
- ビジョンとは最終的に目指すべき状態で、短期目標の先にある中期目標や長期目標がビジョンになることもある
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- 留意点として、必ずしも最初から全員合意の目標を設定できるとは限らず、途中で納得していたはずの目標が変容する可能性もあるため、それも折込んでおく必要がある
- STEP3:阻害要因の検討
- 目標の実現を阻害する要因を検討することで、解くべき課題の発見や目標の問い直しに活かす
- よくある目標の阻害要因は下記5つ
- 1.そもそも対話の機会が内
- 2.当事者の固定観念が強固である
- 3.意見が分かれ合意形成ができない
- 4.目標が自分ごとになっていない
- 5.知識や創造性ガ不足している
- STEP4:目標の再設定
- 阻害要因を検討しながら目標そのものの修正の必要性が見えてきた場合は目標の再設定を検討する
- ここではリフレーミングという手法を用いる
- STEP5:課題の定義
- STEP3,4を往復しつつ課題の輪郭をあぶり出し、解くべき課題が見えてきたら、課題を文章に落とし込み、良い課題になっているかどうかを最終確認する
- 良い課題の判断基準
- ①効果性
- 問題の本質をキチンとついた切り口になっているかや解決することで理想の状態になるのかを確認する
- ②社会的意義
- 関係者にとって付加価値をもたらすのかを確認する
- ③内発的動機
- 関係者が解決したいと心から思える課題になっているかを確認する
- ①効果性
第4章 ワークショップのデザイン
- ワークショップの定義:普段とは異なる視点から発送する、対話による学びと創造の方法
- ワークショップには非日常性、協同性、民主性、実験性のエッセンスが含まれている
- ブレインストーミングからアイデアが生まれない理由
- ”問い”が定まっていないケース多いため、思考や対話が深まらないから
- 判断や結論の排除、自由翻弄な意見、質より量、アイデア同士の結合と改善といった4原則と呼ばれれう方が守られていないことも失敗の原因と考えられている
- ワークショップ・プログラムの基本構造
- ①導入:概要説明とアイスブレイク(本編のテーマと接続するものをチョイスする)
- ②知る活動:資料等をとして情報収集と話し合いを通して知識化する。その知識をもとに過去の経験を振り返ったり、のちの創る活動のための準備をする
- ③創る活動:4-5名のグループによる対話を通して、新しい意味や解を作り出す。
- ④まとめ:成果物を発表し共有する。振り返りや経験による意味付けを行い、次のアクションを検討する
第5章 ファシリテーションの技法
- ファシリテーションとは
- 広義:問題の本質を捉え直し、解決すべき課題を定義し、課題解決のプロセスに伴奏すること
- 狭義:ワークショップの司会者として前にたち、参加者に問いを投げかけながら、創造的対話のプロセスを支援する行為
- ファシリテーションの難しさ
- 動機付け・場の空気づくり
- 適切な説明
- 参加者同士のコミュニケーションの支援
- 参加者の状況把握
- 不測の事態への対応
- プログラムの調整
- ファシリテーターのコアスキル
- 1.説明力:必要な情報をわかりやすく伝える力
- 2.場の観察力:参加者から発せられる情報を収集し、場が今どのような状況にあるのかを把握する力
- 3.即興力:計画していた台本にとらわれず、場の状況に応じて柔軟に対応する力
- 4.情報編集力:複数の情報を組み合わせて、自分なりの意味づけと考えを構築する力
- 5.リフレーミング力:参加者の対話によって場に立ち現れた意味を別の認識の枠組みから捉え直すことで、意味付けを変える力
- 6.場のホールド力:参加者が自由な発想と対話に集中しながらも課題のデザインの際に設定したワークショップ全体の目標が達成されるように課題解決のプロセスを支える力(本質的な問いからぶらさない力)
- 無知な領域のファシリテーション
- 専門家ではないことを予め表明し、スタンスを明確にする
- その上で、答えを持ち合わせはいないが、参加者と共に考えを深める伴走者であることを伝え、場をホールドしながら参加者との関係構築を試みる
- 無知だからこその視点で問いかけを心掛ける